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「◎日常業務で安全確認をしていたかが土壇場で生きる
(株)吉橋興業の取り組みを溶接ニュース新聞の大手メディアが再度取り上げてくれました。」
コロナ禍により産業界が大きな影響を受けているが、溶接現場においても様々な感染症対策を求められている。その一方、人手不足や環境改善など従来からの課題も山積している。コロナ禍が長引く中、溶接現場ではどのような取り組みを進めているのか。連載で溶接事業所の取り組みを紹介する。
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吉橋興業(東京・世田谷区、吉橋厚司社長)はディズニーランドホテル、新国立競技場、羽田空港、六本木ヒルズ、渋谷ヒカリエ、横浜赤レンガ倉庫など、誰もが知っている有名建築物の数々に携わる下地工事のスペシャリストだ。しかし、下地工事は大部分が現場での工事になるため、同社の技能者は日々、大型建築物の現場で溶接業務などを行う。大型建築物の現場におけるコロナウイルスへの対策について、同社工事課長の京井康氏に話しを聞いた。
現場工事、特に下地工事を行う段階での現場は、広い場所で作業するケースが多く、3密にはなりにくい。しかし、ゼネコン各社が現場ごとに求める対策は実施している。
例えば、同社が担当したベイエリアの大型建造物では、作業員が4㍍に1人というスペースで作業するように人員を配置。入口では入場者全員を対象に検温が行われ、37・5度以上で入場を規制。除菌用のアルコールも各階に設置し、休憩に行くときや現場に戻るときに除菌をうながす。
作業員同士の距離をあけると作業が限定される印象を受けるが、「溶接作業における影響は比較的軽度」という。4㍍以上離れるため、小型溶接機からキャプタイヤを伸ばしてトーチにつなぎ溶接作業を行うが、日頃から高所の溶接でロングケーブルを使用するため、作業手順は全現場作業員が共有している。
また、作業員同士が離れるだけではなく、高所での溶接はスパッタが下に落ちるため、自社従業員だけでなく他社の作業員も下を通過しないように、作業環境に区画に配慮する。溶接士はヒュームなどの対策として、通常のマスクよりもウイルスが通過しにくい防塵マスクを着用している。工事現場ごとに対策は異なるものの、コロナ禍への対策は周到だ。同社では独自に選任した安全担当責任者が現場を巡回する自主パトロールなど、独自の安全対策も実施している。
多くの企業がコロナ禍対策による工事現場の変化にとまどいをみせる中、「当社は安定して業務に臨んでいる」とする。これは現場ごとに配置している職長が「現場に出たら工事概要を正確に把握すること」に重きを置いるためだ。
現場工事はリスクがあると協力会社の管理だけを行い、作業には手を出さない企業が増加する中、京井氏は「手足を動かし『職人は宝』をテーマにしてきたことが花開いた」とする。同テーマに基づき、同社では今後もコロナ禍対策にも積極的に取り組んでいく方針だ。
「溶接ニュース」2020年9月8日付け(1)面から